コートダジュールダービー

 現地時間11日20時45分キックオフのフランスリーグ1第21節、ニースVSモナココートダジュール・ダービーが行われた。ニースは公式戦3勝1分と好調を維持し2位でパリサンジェルマンを追う状況、モナコはリーグ戦2分1敗直近のカップ戦も3部クラブにPKで敗れヒュッター監督の進退も注目されるでの一戦となった。

  1.両チームのスターティングメンバー

 ニースは前節からの変更は1人、テュラムに代わりカップ戦で好調だったルシェがリーグ戦初スタメンとなり、433の布陣。モナコは3バックではなく4バックに変更、前線は南野とゴロヴィンがシャードーの位置を取り4321の布陣となった。

  2.ニースの541

 序盤はお互いに攻撃の糸口がつかめない展開が続く。ニースはラボルドとルシェがワイドの高い位置を取るがボールは渡らない。モナコも守備の時間が続き、攻撃時にはベンイェデルの近くに2シャドーがいることからサイドからの攻撃はない状況が続いていた。しかし中央のベンイェデルは起点を作る動きが何度か見られた。ニースは押し込まれると541のブロックを形成するがそこの隙をモナコは見逃さない。押し込んだ状態でザカリアがフリーになるとゴラッソを決め先制に成功する。

  3.CBのプレーメイク

 ニースはアンカーのエンダイシミエはベンイェデルが前に立って消されており、インサイドのサンソンとブダウィも守備的なモナコの3ボランチの潰されてしまいビルドアップが上手く行かない。モナコのボールを失った後のプレスも鋭く終始モナコのペースが続く。そこでニースはCBのトディボとダンテからの攻撃を仕掛ける。トディボからのラボルドへの展開からそこまで起こらなかったラトンバの攻撃参加のシーンを作る。またダンテからゲサンドへの縦パスが3本ほど入ったことでモナコの2シャドーを完全に押し下げ最終ラインへのプレスをさせない時間が出来た。そしてダンテは相手SBの油断も見逃さずルシェの飛び出しにピンポイントのボールを届ける。これがPK奪取に繋がりラボルドが同点にする。ニースはショートパスのビルドアップに固執せずにCBのプレーメイクにより同点にした。

  4.流れを変える「モナ王

 ニースは同点にした後も右サイドの攻撃も活性化、ラトンバの前でブダウィが流動的に動くことでチャンスを作り、左インサイドのサンソンはケーラーのミスを誘い、ゲーゲンプレスでも優位の状態で前半を終える。後半は選手交代はなくスタート、後半のモナコは変化を加える。アンカーのエンダイシミエにフォファナが出ることでビルドアップをさせない。すると2ボランチとなったカマラからザカリアにボールが通るとそのまま持ち運ぶ。そしてこの試合で初めて南野のポケットを取りに行く動きにニースは対応できず、中に入ってきたザカリアにピンポイントクロスで勝ち越しに成功した。南野の活躍はまだ終わらない。勝ち越しの数分後、フォファナのマンマークが活きエンダイシミエのワンタッチのパスミスを誘う。そこを南野は見逃さずにダンテにプレス、ダンテの足裏が南野に入りVARによりレッドカードが提示された。南野は数分でアシストと相手を10人にする充分過ぎる活躍を果たした。

  5.ニースの修正

 10人となったニースはエンダイシミエをCBに下げ441の布陣となり、モナコの攻撃を受ける形にモナコは前半はなかった左SBのヤコブスの攻撃参加により攻勢を強めていく。だが得点には繋げられず突き放せずにいると、ニースはテュラムとロサリオの投入で432の布陣でサイドからの攻撃を諦め、CBの積極的な守備や中盤の運動量によってモナコ陣内に攻め込んでいく。中央に人数をかけながらSBも攻撃参加も行いながらを引き寄せる。するとそのながらで手にしたCKからゲサンドがヘッドで同点とした。

  6.ダービーの意地

 同点になりホームのニースが押し込むかに思えたがそうはいかず。数的有利となってから幾度となく攻撃参加を見せていたヤコブスがベンイェデルのスルーパスに抜け出しシュート、GKの弾いたボールにゴロヴィンが反応し3度目のリードを奪った。ニースは前線にアリチョを投入し個の力での打開を図る。モナコ守備陣のマークの連携ミスもありチャンスを作り出す。モナコは2シャドーにアクリウシュとバログンを投入しカウンターも伺いながらアクリウシュはニースの中盤を消す守備も行う。ニースは新加入のロジェーを投入し342の布陣で同点弾を狙いに行く。モナコの不安定な守備もあり攻撃が続くニースはアディショナルタイムに入ってセットプレーが連続する。GKのブーカも上がるが決定的なシュートシーンには繋がらず。ライバルチームの対戦はモナコに軍配が上がる結果となった。

  7.コートダジュールダービー

 試合を通してダービーにふさわしい打ち合いと両チームの意地がぶつかり合う内容となった。ニースは内容では優位に立つことが多かったもののモナコの重要な場面での決定力は今後へ期待できるものだった。そしてこの試合を左右したポイントはやはりダンテの退場である。この退場で両チームの戦術は全く違うものとなった。今後の両軍の成長の余地を残すゲームとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ローマの変革とインテルの完成度

 現地10日18時キックオフのセリエA第24節ローマ対インテルの試合が強い雨の降るスタディオ・オリンピコで行われた。モウリーニョ解任に伴い就任したデロッシ新監督のもとリーグ3連勝と勢いに乗るローマとリーグ5連勝公式戦は7連勝で前節はユベントスとのイタリアダービーも制しスクデットへ視界良好のインテルの注目の一戦となった。

  1.両チームのスターティングメンバー

 ローマは前節からの変更は1人のみ。GKにルイ・パトリシオ、DFラインは4バックを採用し右からカルスドルプ、センターはマンチーニジョレンテに代わって若いホイセンを起用、左は新加入のアンヘリーニョとなった。中盤はアンカーにパレデス、インサイド右にクリスタンテ左にペッレグリーニの3枚、前線は右からディバラ、ルカクエルシャーラウィとなった。一方インテルは前節のユベントス戦からの変更なし。GKはゾマー、3バックは右からパヴァ―ル、アチェルビ、バストーニ、右ワイドダルミアン左ワイドにディマルコで、中盤3枚は鉄板のバレッラ、チャルハノール、ムヒタリアン、前線はテュラムラウタロ・マルティネスの352の布陣で臨んだ。
  2.ローマのインテル対策
 ローマは試合開始から敵陣内にボールを閉じ込め、インテルにペースを握らせない。開始1分でローマの狙いが見えるプレーが出る。ルカクのシャドーのようなポジションを取ったペッレグリーニのワンタッチからディバラのルカクへのスルーパス、ワイドからボックスに入ってきたエルシャーラウィのシュートで早速チャンスを作る。その後のローマはパヴァ―ルにペッレグリーニがプレス、ダルミアンにはエルシャーラウィがマークすることで343のような形の守備陣形となった。低い位置でもパレデスがCBの間でボールを受け、インテルの2FWのプレスを回避しながら、内側に入ったアンヘリーニョやCBホイセンからの縦パスを狙うシーンが何度もみられた
  3.ムヒタリアンとセットプレー
 インテルはなかなか攻撃の糸口をつかめず、プレスも内側のアンヘリーニョやシャドーのペッレグリーニを捕まえきれず、カウンターに繋げることが出来ないシーンが出てきた。しかし11分にハーフェーライン手前でボール拾ったディバラをムヒタリアンがつぶしてボールを回収、この試合で初めて敵陣内でのボールポゼッションに繋げた。高い位置ではパヴァ―ルとバレッラのポジションチェンジによりペッレグリーニのプレスを無効化。より前の圧力を強めることによりローマの低い位置でのポゼッションをさせずに高い位置でボールを回収できるようになった。13分にはショートコナーからディマルコの正確なクロスからチャンスを作る。ここからインテルが主導権を握る。15分には再びムヒタリアンがディバラからボールを奪取しカウンター、セットプレーを獲得。このセットプレーが結果的に17分のアチェルビのバースデー弾に繋がった。
  4.インテルの修正能力とローマの変化
 ローマは1点を奪われボールは保持できるもののディバラにはバストーニ、ペッレグリーニにはパヴァ―ルがマンマークすることでローマに狙いどうりの攻撃をさせない。アンヘリーニョにはバレッラが出ることにより、ローマのCBからの縦パスはなくなった。しかし右サイドでクリスタンテが組み立てに加わることで左サイドのアンヘリーニョへのスライドを遅らせて、クロスシーンを作る。ボックスにもエルシャーラウィが侵入することでローマは高い位置でのプレーを継続、テュラムをホイセンがつぶし攻撃回数を増やしていった。インテルのビルドアップに自由を与えることなく、高い位置のボール奪取からセットプレーを得る。ディバラとパレデスがデザインしマンチーニが同点弾を決めた。
  5.ローマのロングカウンター
 スコアが振り出しに戻ってからは一次はローマがボールを握る時間が続いたが、すぐにインテルがボールを保持する時間が増えてローマはカウンターを狙うケースが出てきた。バストーニの攻撃参加や高い位置でのローマのミスを誘いセットプレーも増え、試合を有利に進めていくインテル。ローマは右サイドでポジショニングが被り、攻撃のテンポを上げられない。攻め込まれるローマだったが41分に糸口を見つける。クリスタンテからペッレグリーニに縦パスが入ると前線3枚が一気に飛び出しディバラのシュートシーンを作った。そうして有効なカウンターを実行できるローマは532のようなブロックをひく。バストーニが攻撃参加さらにはセンターのアチェルビも左サイドの高い位置を取る。これによりムヒタリアンがカバーに入っていたがその陣形の変化をローマは見逃さなかった。ルカクマンチーニインターセプトを落とすとペッレグリーニが前進して4対3の状況を作り出す。最後はエルシャーラウィがニアのコースに決めロングカウンターから逆転に成功する。そのままローマの1点リードで前半を終える。
  6.テュラムの役割とバレッラとムヒタリアンの推進力
 後半開始の交代はなくスタート。インテルがボールを保持しローマは532のブロックをひく展開が続く。テュラムポストプレーも前半はホイセンに抑えられていたところを競り勝ち、そのボールをバレッラとムヒタリアンが前線にボールを運ぶ。セットプレーをゲットして流れをインテルに引き寄せる。ローマの攻撃に対しても陣形を整えるのは素早く中盤のボール回収も増加した。49分にはトランジションでローマを上回りハーフェーライン付近のファールからローマの中盤に空いたスペースをバレッラとダルミアンは見逃さない。ローマの532の陣形を作らせずダルミアンのダイレクトクロスにテュラムがマークを振り切り同点とした。ローマにとっては隙を突かれる失点となった。
  7.インテルの左サイドの攻撃性
 2-2になってもインテルの攻勢は変わらない。バストーニとディマルコが飛び出す攻撃も何度出てくる。ムヒタリアンラウタロを前半よりも少し下がった位置でのプレーも行い、ローマの右サイドの守備は機能しなくなってしまう。ペッレグリーニは前に出て守備をしようとするが連携はなくなってきてしまった。テュラムポストプレーが何度もありインテルの攻撃が続く。56分についに逆転に成功する。ムヒタリアンの推進力が光りポケットを取ったところからテュラムが飛び込みアンヘリーニョのオウンゴールを誘った。
  8.ローマの選手交代と守護神ゾマー
 インテルのリードとなってもローマはペースを握れず、ルカクとディバラはプレスすらできなくなってしまう。ワイドのカルスドルプとエルシャーラウィも前に出ていくシーンはなくなった。高い位置にボールを運べてもインテルの532のブロック形成が早くクリスタンテとペッレグリーニの入るスペースはなくなってしまいボックスに侵入出来ない。バストーニの攻撃参加により、ルカクとディバラは守備に追われてしまう。61分にローマはクリスタンテとアンヘリーニョを代えてボーヴェとスピナッツオーラを投入し流れを変えに行く。エルシャーラウィが中にポジションを取りスピナッツオーラがワイドで仕掛けようというシーンやボーヴェが組み立てに参加することでディバラがよりゴール近い位置でもボールに関わることが出来るようになっていく。しかしパレデスやペッレグリーニの足が止まってきたことによりインテルのカウンターのシーンや時間を進めるプレーが増えてくる。そんな防戦一方の中で70分にローマに後半最大のチャンスが訪れる。エルシャーラウィの戻りからペッレグリーニへ、裏に抜けたルカクにロングボールが繋がるが、ゾマーは最後まで体を倒すことなく対応、インテルはピンチを凌いだ。
  9.インテルのブロックと走り切る力
 76分に両チームが交代、ローマはバルダンツィとザレウスキを投入し攻撃の活性化を図る。インテルはよりはっきりとした532のブロックで守備を固める布陣となった。バルダンツィがテンポを作りボーヴェやカルスドルプも前に絡むようになりローマの攻撃シーンは増えていく。ただインテル守備陣もカウンターの起点やボックス付近のシュートへのアプローチは正確にプレーしている。ローマがゴール前でのクオリティを欠いたままアディショナルタイムに突入。インテルの3枚の中盤は変わらない運動量でローマはチャンスを作れずにいるとローマの縦パスをひっかけるとサンチェスからアルナウトビッチに繋ぐと後ろから出てきたバストーニが決めてダメ押しに成功。インテルらしさのある4点目となった。
  10.ローマの狙いとインテルらしさ
 前半はローマの狙いを持った入りにインテルが修正していくことで先制点を奪うことに成功したが、ローマのセットプレーと前線3枚の飛び出しを活かしたカウンターで逆転した。前半のキーはセットプレーにある。両チームとも流れが良くなくてもセットプレーをきっかけに主導権を手繰り寄せるシーンを多い前半であった。後半はインテルのチームとしての完成度の高さが目に見えた展開となった。後半開始直後からの得点シーンやリードしてからのブロックはさすがといえる。ローマもボーヴェやバルダンツィはある程度の効果はあったものの得点には結びつかなかった。
 ローマにとってはデロッシ政権で初のビックマッチだが決して悲観する内容ではなく、今後に期待できる試合内容となっている。インテルスクデットに向けまた前進、ミッドウィークの大一番CLアトレティコ戦に向け自信はより強くなったと言えるだろう。